夢見対談 サッポロビール株式会社×銀座ミツバチプロジェクト 

世界初!ニホンミツバチからビール酵母を発見!『銀座ブラウン』誕生秘話と今後の展望

琥珀色をした、香り高く、甘い香りが特徴の『銀座ブラウン』。 銀座のミツバチからビール酵母を発見し、約2年の歳月をかけて誕生しました。 昨年夏、短期間限定で銀座内で提供された『銀座ブラウン』の誕生秘話と展望をたっぷり語っていただきました。
・サッポロビール株式会社 取締役執行役員  新価値開発本部長 渡 淳二
・サッポロビール株式会社  生産技術本部 価値創造フロンティア研究所主任研究員 小川雅裕
・サッポロビール株式会社 新価値開発本部 新価値開発部  第2新価値開発グループ グループリーダー 細川 恭伸
・銀座ミツバチプロジェクト 副理事長 田中 淳夫

 
 

名称

銀座ミツバチプロジェクト

お問い合わせ

03?3543?8201

こうしてビールづくりは始まった!

田中: 最初にサッポロビールさんが、なぜこんな形でビールを造ろうという思いに至ったか。「それはお前が言ってきたからじゃないか」ってこともあるかと思いますが、渡取締役のところに話がいって、たぶん呻吟されたと思うんです。「そんなことやっていいのか」みたいなね。結果的に酵母調査に至った経緯やなぜそのような気持ちになったかをお話しいただけますか。

渡: 確か2010年1月に銀ぱちさんにお邪魔しました。田中さんに「銀ぱちとは何か」と話を伺って、いろいろ考えました。最初はやっぱり、「ミツバチ」と言ったら、ハチミツの活用に目が行きます。ハチミツそのものを使ってビールを造ることはできる。しかし、銀ぱちのハチミツって貴重ですよね、その方法ではハチミツそのものの量が必要になるので、いろいろ考えるととてもハチミツの量が足りないというのが真っ先に浮かぶんです。ほんの小さくやる分にはいいのですが、それではこの活動を大きく広げていくのに我々は大きな貢献はできないだろうなと。ハチミツそのものの活用はこの銀座の地で、お菓子やカクテルなどの商品でやるのが一番いいのかなと。 じゃあ、どうしようかと思いましたよね。私の頭にあったのは、「ビール」と言えば「酵母」です。ハチミツをどう結び付けるかということなのですが、昨今、自然界から有用な酵母を採ってきて発酵食品やお酒に使う例は結構あるんです。ハチミツそのものではなく、ハチミツから採った酵母ならいい取っ掛りになるかなと思いました。でも、最初は簡単に採れるだろうと思っていたんですよ。

田中: 僕もそう思っていました(笑)それはなぜかって、知人がハチミツのビールを持ってきてくれたんです。こういう風にできるなら銀座でもできたらいいなって思いました。「天然酵母」ってあちこちで聞きますから、すぐ採れるのではという、素人考えだったんですけど…「そういう大それたことだったのか」と。これは途中から「ずいぶん迷惑をかけたな」と思いました…。

渡: 酵母の採り方はいろいろあります。採取の難易度はやってみないと分からないもので、ハチミツから軽く突っ込んでみようと。サンプルをもらってまずは開発部員とプランを練り、酵母の専門家も関与させてどの程度のものが採れるか、研究所に仕事をお願いすることにしました。結果として、ハチミツから酵母を見つけることは、意外と難しいことが分かりました。その中で、周りはどう思ったかわかりませんが、やりかけた以上、「必ずやらねば!」と思ったんです(笑)

田中: はははは(笑)

渡: やりかけた以上、絶対にやるという方針ですからね。途中でお話ししましたが、「時間がかかるかもしれませんが、必ずやりますよ」と。

田中: ありましたね。

渡: 時間がかかると思ったので、研究所の小川に調べてもらえるようにして、私の昔からの知り合いでお世話になっている東京農業大学の小玉先生にもお願いしました。小玉先生は海洋酵母という海から酵母をとってきた有名な先生です。先生はある意味酵母の狩人というか、自然界から酵母をとってくる酵母ハンティングの名手なんです。その先生と当社の小川が組んでやってくれたら確度も上がるし仲間に入ってもらい共同研究開発をお願いしました。まずはハチミツから酵母を見つける努力をし、なかなか難しかったので、ミツバチの環境にだんだん広げていく。とにかく、必ず採ろうと。で、2年ぐらいかかっているわけですけれども…途中で「採れた!」と思ったら違ったとか…。

銀座のビールはヨーロッパ的に
渡: そんなこともあったんですけど、そうこうして、小川もしっかりやってくれて、最終的には目的とする酵母が採れました。素材としての酵母はいずれ採れるだろうと私は思っていましたが、じゃあ採れた場合どんなビールを造ったらいいんだろうとずっと頭の中で考えていました。銀座に最も合うようなビールって何だろうなと。あっさりとしたビールというより、やや個性があって、ちょっと面白い、しかし、ビールらしい爽快感があっておいしく飲めるビールと考えていたんです。私は世界中のビール飲んできました。銀座は文化薫る粋のあるところですから、その中で銀座に生まれるビールのイメージとして、ヨーロッパ的なところがベースにあるといいのかなと、そうなるとブラウン系のビールがふさわしいかなと思いました。何回か仕込んで試作してみました。できたらネーミングを考えていきました。

田中:酵母が採れて味を決めるのではなく、ある程度の流れを考えていたのですね。

細川:「銀座」は入れないとよくないだろうという話をしていて、お客様が何のビールかわからないといけないので、端的な名前を考えていました。

渡: 例の洒落があって、「銀座」ですから「銀座で銀ブラをしながら『銀座ブラウン』を飲む」という…

田中: すぐわかりましたよ!

渡: 『銀座ブラウン』、略称「銀ブラ」。わかる人はわかるだろうなと。これが分かる人は「銀座の人」だなと!

田中: 名前聞いた時にニヤッとしました。

渡:今の若い人って「銀ブラ」ってわかっていないと思うんです。それはちょっと問題だと思いますね。そういう意味でも「銀ブラ」って重要な名前なんです。若い人はそういう経験がないのか、そもそも銀座に来ないのか、知らないのか。

田中:「銀ブラ」自体が「銀座」でブラジルコーヒーを飲むというということで、カフェパウリスタが銀ブラの発祥だと言われていますが、銀座をぶらぶらするのが「銀ブラ」とも言われていますよね。でも、歴史って変えるものですから、「銀ブラをしながら銀ブラ(銀座ブラウン)を飲む」という新しい表現も面白いなと思いました。

渡:うちのマーケッターもセンスいいので。考えてくれました。

なかなか見つからない酵母
田中:小川さんは酵母調査を受けてどうでしたか?

小川: 入社当時から指導教官のような存在でしたので、逆らえないのですね。(笑) はじめは「このハチミツの中に酵母がいるか調べてくれ、もしいたら採ってくれ」という話でした。調べてみて酵母がいたので、採りました。採っただけだと文句言われますので、ビール原料の発酵性を調べて、確かにアルコール発酵することを確認して、できたものはまずいものでもなかったので「ハイできました」と報告しました。趣旨は全然聞いていなかったんですね。銀ぱちさんとのコラボともなんにも聞いていなかった。その後、渡から壮大なメールが届きまして…「この情熱を君はどう考えるんだ!」という内容で。「き、聞いてません(汗)」という感じでした。その後、直接話す機会がありまして、やっと思いのたけなどが分かりました。

田中:そうなんですか。

小川:シーズンによってハチミツの味が変わるのは面白いですが、渡が申した通り、まず酵母からという切り口が非常に分かりやすい戦略でしたので、それでやっていこうと思いました。「酵母はきっといるに違いない」と私も思いました。ミードという蜂蜜酒がありますから。ただ、完成したハチミツ自体は、常温で未殺菌でも微生物が増えたりしないので、酒造りに適した酵母は「いるわけがない」と、ましてや旨いビールを造れる酵母はいないだろうと思いました。それまでに発見できていた酵母は、醤油酵母の仲間で毛色が違いました。これでは話にならないと、渡からダメ出しを食らいました。「サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)」というお酒を造る酵母 がいるのですが、この酵母を採ることに目的を変更し、戦略を新たに練り直して、いろいろなところから採取を試みました。巣箱とか、採ってきたばかりの未完成のハチミツとか。それでも採れませんでした。もともと酵母は花の蜜や樹液などに比較的多くいるので、もうこうなったら花に行った直後のミツバチから直接採取しようと。

田中:戦略を変えたのは2年目くらいから?

小川: そうですね。初年度はハチミツや巣箱から採ろうとして、それで採れませんでした。2年目はミツバチ本体から採取しようと、ターゲットを絞っていきました。

渡:花の時期やミツバチの活動の時期も関係があるんでしょうか。1年目はそれに間に合わなかった。通年でやっていくと、変わっていく環境の中でいつかピークがあるだろうと思っていました。

細川:養蜂の旬の時期ってあるんですか?

田中:そうですね、春先から初夏までですね。秋にも花は咲きますが、越冬のための蜜を貯めさせるので、採蜜はしません。ですから養蜂は季節が限られているんです。

渡:小川さん、ミツバチを見てて花粉をいっぱい持ってきている時期とそうでない時期があったんじゃないの?

小川:そうですね。花粉団子いっぱいつけてきているのは蜜をいっぱい吸ってきてるだろうなと思いました。それだけを選んでサンプリングしました。

世界初!のビール
田中:酵母は実際に顕微鏡で見るんですよね?培養するんですか?

小川:そうですね。培養します。

田中:培養して増えたものを顕微鏡で見ると、たぶん自然界のものだから、いろいろな種類のものがうじゃうじゃいるんじゃないですか?

小川:そこは、技術でそうならないように培養します。いろいろな酵母の中から目的の酵母を選ぶのです。

田中:お醤油の酵母でなくお酒の酵母が増殖するようにするんですか?

小川:そうですね。「選抜」という方法なのですが、目的とする酵母だけが増えるような条件をいろいろと工夫して、どんどんいらない酵母を排除していきます。そうはいっても、ビールに適した酵母だけを抽出するのは難しいので、いくつかの酵母を採ったうえで、いろいろな分析をします。今回はDNAを直接読んで、同定するという手法をとりました。それによって「ビールを造る能力のある酵母であることに間違いない」ということが証明されます。

渡:何をもってビール酵母というのか問題ですが、昔から使っているビール酵母は確かにビール酵母と呼ばれています。ただ、私たちが探す場合、自然界にこれと同じ酵母が転がっているわけではないのです。いろいろ探してきて、試験してみて、ちゃんとビールが造れて問題がない酵母であれば、昔から使っているのとは違う由来のものでも「ビール酵母」といってよいと。ミックスされた酵母ではなく、我々がやっているのは純粋培養で、たくさんある中の1つをとってきて、それのみでビールを造っている。だから今回、ミツバチから酵母をとってきたという報告が世の中にあるかもしれませんが、ミツバチから採れた酵母を純粋培養してビールを造ったことはこれが初めてだろうと思います。ビール会社は「純粋培養」と言って、1種類の酵母を増やしてビールを造っているのです。

細川:ミツバチから採った酵母を純粋培養してビールを造ったのは世界初だと思います。ですから、リリースでもぜひ「世界初」を入れたいなと思っていました。

田中:「世界初」ということ自体がすごいですね。

渡:小川は酵母の専門家ですし、研究所もしっかりとした技術を持っていますので、そういう仕組みを使って、最後にDNA鑑定まで行って、ちゃんとビールを造る能力のある酵母であると証明しました。

田中:それだけの証拠をとってやることってすごいですね。そうはいっても、培養して、エリートを抽出するのは時間がかかるんですよね?

小川:そうですね。この酵母のサンプルは2011月6月に採ったものです。結果が分かったのが9月になってからです。ですからそれまでの期間は調べる期間でした。

田中:それ以外にもたくさん採っていますからね。

小川:もちろん同時並行で他のサンプルも調べますから、1つだけにこだわっていられないというのもありますが。それだけでやるんでしたら、もう少し短い期間でできます。2週間に1回サンプルをとっていたので全体的な時間はかかりますね。

わくわくしながら酵母を探す
田中:私どもの酵母だけではなく日頃のお仕事もある訳ですよね。

小川:そのあたりがつらかったところです(笑)

渡:研究所でも、その辺理解してくれて、本来の研究所の仕事も忙しいですが、将来に向けての重要な商品開発のネタ、商品開発の基盤として理解していただいていたので、有難かったです。メーカーですから、研究開発から、商品開発、製造、販売まで一貫してつながっているわけです。本人も大変だったと思いますが、楽しかったんじゃないの?

小川: 私自身は、この仕事自体は、本来の業務とはちょっと違いますから、楽しかったです。「まずは酵母を採ってみろ」というのは会社としては珍しいことですので、むしろわくわくしながらやっていました。

渡:採らないことには次にはつながらないし。採れたら面白いことがいろいろ広がるぞと。大事なのは、私が小川にそれだけ言える自信があったのは、この仕事は社会的大義がありますよね。もともと銀ぱちさんがやっている活動、われわれはそもそも銀座に本社があった会社ですので、銀座とのつながりがあった。私も、入社した時、本社は銀座でしたからね。「銀座」って聞くだけでわくわくします。しかも、その銀座を活性化するための活動、「銀座はモノづくりの街」とか、都市からの環境へのメッセージを出す活動として、銀ぱちさんに共鳴するところがありまして何ができるかと考えると、この仕事は一風違うんです。だからこそ、われわれも先がどうなるかわかりませんが、続けていく。

田中:みなさんが粋に動いてくれたことは非常にありがたいことですね。9月に発見できた時点で、これでいけそうだとすぐわかったわけですか?

小川:その時はまだです。おいしいビールを造れる酵母とそうではない酵母といるんですね。また、パンはうまく造れるけど、お酒はうまく造れないという酵母もいます。見つけた酵母が、ビールを造れる酵母かはわかっていませんでした。 ただ、これで初めてやっとスタートラインにたったという気持ちでした。このスタートをもっと広げていくことで、もっといいものはないかと見つける方向に行けましたので、気分的には楽になりましたよね。

えええ?パン?ワイン?
田中:僕は「できました」と聞いて、「これはすごいぞ」と思ったんですけど、それから秋から12月ぐらいまで、かかりましたよね。商品開発の潮井さんがパン、ワイン、ビール、を持ってきて「どれにしましょう?」って言われた時に「えええ~???」

みな:ははは(笑)

渡:それは同時にですね、ビール主体では考えているんですけど、ビールができればワインもパンもできるんですよ。発酵ですから。

田中:なるほどね。

渡:しかし、急に広げるわけではないです。ビール会社ですから。ワインも先々面白いなと。あと、パンは、銀座のスワンさんの話を聞いたので、面白いかなと思ってついでにパンも焼いてみようかなと(笑)

田中:サッポロビールさんと2年かかって研究して、「はいパンができました」っていうのもね(笑)最初から僕はビールだと思っていましたから。

渡:もちろんビールですよ。でも、ビールもできるし、ワインもパンもできるポテンシャルのある酵母で、いろいろな楽しみが増すということです。

小川:実は酵母って、ビールを造るのは結構ハードルが高いんです。パンやワインを造るほうが、ハードルが低いんですね。

田中:そうなんですか!?

小川:自然界から酵母をとってきて、すぐ商品化できるのはパンやワインです。ワインは自然発酵でできますから、しかし、ビールになるとそうはいかないところがあって、それはビールの原料が葡萄とはちがうということにもよるのですが、なかなか難しかった。私の保険として、もしもこの酵母でビールができなかったら、ワインやパンは押さえておいたほうがよいだろう思っていました。

見えていないものに気づく
渡:酵母を見つけて、できることなら学術的な面からも面白いことができないかなと思いました。今度、小川が日本醸造学会で発表します(平成24年9月)。銀座の中での酵母環境が学術的な面からわかると面白い。「都市環境における微生物の生態」とか「菌叢」、な~んて言ったら学問的に聞こえるでしょ(笑)菌叢の季節変化などわかったらおもしろい。目に見えない微生物が、銀座の都市環境の中でミクロの世界のマクロな世界が見えてくると思うと、多少夢がありませんか?

田中:私たちが、環境と共生する街の姿の話をしているときに、どうしても生き物の話をしますが、この微生物も生き物ですよね。それまで、銀座でハチミツが採れるなんて誰も思っていなかった。街の中を俯瞰すると生き物の世界があるということにミツバチを飼ってみたら気がついた。街を歩いている人たちが思っている銀座の生き物と言ったらなかなか思い浮かばないけれど、実はそういうものがある。

渡:そうですよね。特に微生物は目に見えないですけど、人間と共存しているんです。我々もある意味、菌の塊みたいなものです。

田中:繁華街の真ん中でこのような資源が採れたということは驚きというか、「無から有を産む」ような話だと思うんですよ。

渡:「無」じゃないということが分かったと思いますよ。

田中:分かりました。

渡:無だと思っているのが間違いなんですが、そういうところが分かってくる。 「空即是色」です。

田中:渡さんから、目に見えないようでも、そこには微生物の世界があるんだと、あるからこそ「有」が生まれてくるんだという話を聞いて、なるほど、面白い世界だなと。自分たちの足元に何もないと思っている人たちがいっぱいいるけど、実はいろんなものがあるんだよということが分かってきた。街の可能性を教えてくれたんじゃないかなと思いました。

『銀座ブラウン』今後の展望
田中:今回、周到な準備をしてくださって次のステージに来たと思いますが、『銀座ブラウン』がお試し期間を終えて、製造から販売に向け将来的にどのようにお考えですか?

細川: 『銀座ブラウン』をどのように世に出して、価値のあるものにしていくかということが、私のミッションです。今回発売する時も一番は銀座にお役に立てるような出し方にしましょうと頭に入れてやってきました。おかげさまで、松屋銀座さん、銀座三越さんでのお披露目でも大変好評いただいて、ライオン銀座7丁目店さん、5丁目店さんでもお邪魔して聞いてきましたが、非常に好印象で良かったという話でした。これを踏まえて「次どうするか」と。今、練っている最中です。根本を忘れてはいけない。「これは何のためにやってきたのか」ということ考えると、やっぱり「銀座を活性化させていこう」というところがベースだったと思いますし、「銀座」という日本の大都市、繁華街、一番有名な街が「モノづくりの拠点になるんだ」ということを世の中にアピールする。銀座ミツバチプロジェクトがこういう活動をしているんだということを世の中に一緒になって情報発信していく。いかに銀座の価値をわかってもらいながら売り続けてもらえるような出し方をするってことをベースに案を練っているところです。

渡:大量生産大量販売でやる商品ではないと思っています。基本的に継続的に、先のことを考えなければいけない。世に商品として出して、ブランドとして末永く残っていく商品は多くはありません。どの会社もそうですよね。この『銀座ブラウン』も一過性でぽんとはじけて、それで終わっちゃったらもったいないですよね。

細川:そうですよね。商品って本当に生き物です。初めは物珍しくて飲んでくれても、続かないとすぐ市場からなくなってしまう。せっかくこの商品にこんなに苦労してきたのにってことになりますよね。

渡:銀座ブランドの商品としてうまくいかなかったら銀座の価値を棄損するわけですよね。それは嫌ですよね。はやく世に出て我々もやっていきたいですが、そこは冷静に考えて、初心に戻って、一番いい形で継続できる、何らかの方法をできる限り追求したいなと思っています。いつも飲めるものではなく、限られた時期に飲むような形になるかもしれませんが。それでも、価値が続くんだったらその方が良いと思いますし、いろいろなやり方を考えていきたい。我々だけではなく関係者含めて。

細川: 銀座ライオン7丁目店さん、5丁目店さんの支配人にヒアリングしてきましたけど、一番驚いたのが、大きな広告を打っているわけでもないのですが、『銀座ブラウン』が銀座ライオンで発売される情報を知っていて、発売当日に「ここで飲めるんですよね」と『銀座ブラウン』を目的としていらっしゃった方がたくさんいた。

渡: ビジネス的にいうと、「芽のある商品だ」ということが分かってよかったですね。これで売れ残りが出たとなってしまうと我々もまずいなと思ってしまいます。そんな心配はしていませんが(笑)。銀座全体のベネフィットになるかどうかというところは「考えさせてください」というところです。

細川: 継続して売り続けるのか、年に一回とか限定的に販売するのか、容器は樽で良いのか、あるいは違う容器に入れたほうが良いのかとかエリアはホントに銀座だけで良いのか、いろいろな問題がありまして、今整理しているところです。

田中:そうですね。僕らがこういう風に有名にしていただいたのは、百貨店さんも僕らのハチミツを使った商品を売るために、銀ぱちの活動を紹介してくれて、お互いに相乗効果でみなさんで作ってきた、僕らだけで作っているんじゃない。そこはしっかりとわきまえています。今シーズンはここと一緒にやりましょう、次はこことというやり方はたぶん街の中では続かないと思います。ですから老舗のみなさんと付き合うということはそういうことなんだろうなと思います。これはお互いにパートナーとして理解していると思う。それを踏まえて次の世界ですよね。

銀座の日々の営みから生まれたビール
田中:銀座ブラウンは、北海道に行くと飲みたくなる「サッポロクラシック」に近いものになるかなと思ったんですが。

細川:どこまで広げて行けるかですよね。北海道なら区切りやすいんです。北海道の中でしか売っていないというわかりやすさ。

渡:明治の初め1899年初めてのビアホールは銀座8丁目の辺りだったようです。この時代、ビールは日本にとって洋物もいいところで、最初はみんなおいしいと思って飲んでいたかどうかは分かりませんが・・・。札幌で造って、氷で冷やしながら船で持ってきて銀座で一部のハイカラ層に料亭とかで飲んでもらうことで広がっていったということです。その頃ビアホールというのは相当物珍しいものだったと思います。

細川:チャレンジだったと思います。

田中:そこから新しい何かが生まれたんでしょうね。今回はまた違った、環境という新しい切り口のものができつつありますね。

ハレの日には『銀座ブラウン』
渡:銀座のこの環境の中で酵母が採れたことは、何かストーリーがありますよね。歌舞伎座の方から逃げてきたハチから見つかったんでしょ?

小川: 團十郎と名付けられたニホンミツバチの群れから見つかりました。

田中:それをロータリークラブの食事会の時に市川團十郎さんに言ったら、突然壇上に上がって、「田中さんとこのハチが歌舞伎座から来たから團十郎とつけたそうで、そこからビールができたそうだよ」と宣伝してくれました。歌舞伎座の解体の時に逃げてきただろうニホンミツバチの群れですからね。

渡:いいエピソードですよね。

田中:こんなこと言うと笑われてしまうかもしれませんが、僕らの中では非常にドラマチックな話がつながっていくんです。街の中にいて街の中の日々の営みの中から何かが生まれてきている感じがしました。そういう意味では、まず街の人たちに喜んでいただくというか、そういう風になるとうれしい。銀ぱちがだんだんブランドにしてもらっている気がしているのは、銀座に来た方やハレの日に銀ぱち商品を求める。そういうふうになってきたのかなと思っています。銀座の街って「初めて銀座でフランス料理を食べた」とか思い出が凝縮している心の中にあるブランド。 それを考えると、『銀座ブラウン』は、楽しい時に飲むとか、ハレの日に飲むとかそういう商品になっていくといいのかなと。銀座で採れた酵母だからブランドではない、続かないといけないですからね。そこを踏み間違えないように発展していくといいですね。(2012年9月14日収録)